HPの更新や情報発信しない非上場企業は経営状態が悪いのか?

11カ月近くお知らせその他でのHPの更新していなかった当社がこのようなタイトルの内容を投稿するのもどうかと思いますが、少なくとも当社は順調に経営しておりますのでご安心ください。ご安心できない方は最後までお読みいただけると幸いです。

さて、スタートアップはもちろんのこと非上場企業全般で、HPが作られているが内容が更新されない企業は活動が停滞しているのではないかとか、経営が悪化しているのではないかと感じる方も多いと思います。経営が悪化している企業のHPが更新されず、気が付いたら破産通知が届いたりそれに前後してHPが見えなくなるということも実際にありますので経営状態が悪い場合も往々にしてあるとは言えます。

当社は多くのスタートアップを含む非上場企業の経営実態や内情を見ておりますが、HPの更新等をしない企業が必ずしも経営状態が悪いということではありません。むしろ、好調な場合すらありますし、逆に頻繁にIR を行っている企業のほうが経営状態が悪いということもあります。ここでいう経営状態とは財務等に現れる数値的なものという意味で使用しています。以下に組み合わせパターンでの会社の現実にある例を考えてみます。

1.経営状態がよく、情報発信も多い場合

最も良いのは、経営に余裕があり成長を支える人材確保・効率化等が進んでいることで十分な対応ができる状態です。さらなる顧客獲得やブランド力の強化等が行われます。一方で先行きリスクが高くなるのは、人手不足等で対応の余裕はさほどない状態なのに人件費を抑制するなどで余剰人員を嫌い中の人が疲弊してしまう状態です。後者の場合、一見今はよくてもある日突然組織が崩壊してしまうということが起こりえます。いずれもオーナーシップの高い企業(オーナー自ら広告塔となるような企業など)に多く見られます。X等を見ていると実際に決算数値等の公表や会社の活動を積極的にアピールするオーナー社長などを確認できるでしょう。

2.経営状態がよく、情報発信が少ない場合

最も良いのは、経営に余裕があり情報発信等をしなくても顧客の確保等ができている状態です。わざわざ無駄な追加コストをかけて情報発信する必要はないため、追加対応は行わず、むしろ業務改善等でより多く顧客を効率的に捌く体制の構築や顧客の満足度向上を行おうと考える状態です。この好調な企業のリスクは増える顧客を捌けないことでの頭打ちや、品質低下等による既存顧客の満足度が低下や新規顧客からの評判が悪いことなので、追加顧客を増やすことよりも効率化や顧客満足度を上げることに対応している可能性があります。一方で先行きリスクが高くなるのは、余裕はあるのに業務改善も情報発信も行わない現状に胡坐をかいて満足してしまっている場合です。いずれもtoB の中小企業(製造業など)でよく見かけます。名前を聞いたこともないような企業が、何十年前につくったのだろうという古いつくりのHPが放置しているということはよくありますが、経営実態は同業の小規模企業を複数M&Aして商圏拡大していけそうなほど内部留保がものすごく多いなんてこともありました。

3.経営状態が悪く、情報発信が多い場合

経営に余裕はないものの情報発信等をして企業活動をアピールする必要がある状態です。既に顧客がいる場合は既存顧客が安心できるように活動状況更新したり、新規顧客の確保をする目的で実績等を紹介するなどがあります。スタートアップでよく見かけますが、この露出により新たな資金調達のきっかけにつなげたり売上向上につなげる目的が考えられます。株式会社は毎期決算公告を行う必要がありますが、資本金減少時くらいしか公告を出していない企業は多く実際に債務超過となっている事例は多いです。最終的にうまくいかない場合、経営者の性格や考え方により、4に移行するか3の状態のまま計画倒産と疑われるような形も含めて会社を閉鎖ということが起こります。創業初期の資金調達期はまだしもプロダクトやサービスを提供開始してからうまくいかないケースです。EC商品の体験型店舗を運営していた株式会社テックアットは、無料体験企画やインフルエンサー発信を活用して集客しており、倒産直前にも資金調達を行っていたようで突然の閉店、破産申請となったようで、直前の代表以外の取締役の辞任、夜逃げと思われる状況から計画倒産ではないかとの見立てもあります。

4.経営状態が悪く、情報発信も少ない場合

経営に余裕がなく情報発信すら行えないほどの状態です(精神的な余裕がない場合も含む)。プロダクト開発や仕入れ等をしようにも資金がなく、資金繰りに奔走せざるを得なかったり、既に廃業を決め準備を進めている(関係者とのコンタクトを取らない)場合もあります。スタートアップ含めて、非上場企業に議決権のある株式での投資を行っている場合なら決算後2カ月程度で株主総会が開かれるため決算数値がわかる・・・・とも思われがちですが、株主総会すら開いていない(当然通知がこないので決算がわからない)という法人もあり、その場合はこの状態の可能性が高いです。実際、ECF(株式型クラウドファンディング FUNDDINNO)で上場が近いと誤解するような文言を含め複数回にわたり多額の資金を調達した株式会社SKRは会社や代表の方との連絡がつかない状態が続き、前期の株主総会が開かれないまま翌期も終了しその後破産手続き開始が判明するという状態でした。

結論

財務状況の直接の確認ができない場合に、HPの更新頻度等だけでは企業の経営状態は判断できません。経営判断を行う際には現地確認・関係者のヒアリングが不可欠です(株式会社は決算公告等により財務状態の開示を行う必要があります。一方で官報で公告すると登記記載している企業は多いものの開示しているところはほぼないのが実情です。)。

なお、当社は合同会社であるため決算公告の法定義務はありません。しかしながら、情報発信の重要性を考慮し第4期(2025年2月期)までの財務状況を決算公告スタイルで開示する予定です(現時点で第3期までの情報は開示済みです)。また、兄弟会社のインベストメント・ファシリティーズ株式会社については法定の開示を行っていることを申し添えます。