ahamoトラブルに見るDX化への過程

 ahamoが大人気だという。一方で様々なトラブルも見え隠れしています。この一連の状況にDX化に進む社会全体の縮図が感じられます。

オンライン専用に気が付けないし損をする

 ahamoはそのプランや値段がCMで喧伝され、いままで内容の理解すらせずにdocomoの高いプランを契約していた層が安いのなら変えたいとdocomoショップに出向いてしまうようです。ahamoはオンライン申し込み専用のプランなのです。TVCMを見る世代は比較的中高年が多く、若い人はYoutbe、AbemaTV、Netflixなどなどオンラインの映像をよく見るもののTV視聴率はだいぶ低くなってきています。そもそもTVを家に置いていないという人も若者中心に増えているようです。ahamoの情報もネットニュースやtwitterなどから情報を得て疑問があればすぐネットで調べ、現在のプランとの変更などを考えて手続きを進めようとする、そういったことが普通にできる人のプラントも言えます。また、はじめからプランにシビアな人は、既に格安SIMを使っていて容量や速度の問題を考えてahamoに乗り換えるべきかを検討するという流れです。

 ここにあるのは単にデジタルデバイドで仕方がないと片付けられる問題ではありません。今、世の中は総じてこのデジタル化による効率化に向けて進んでいます。弊社では必ず案内するgBizIDの取得ですが、行政もDX化を掲げ、徐々に補助金等の申請に必須(gBizIDなしの補助金申請もオンライン化されてきており、予備としてサポート会場などが用意されていますがそのうちなくなる可能性もあるでしょう)のものになりつつあります。これらの情報もネットで調べられる層は即時に把握できますが、そうでない層は担当の税理士さんや経営者仲間などが教えてくれなければ、その存在すら知ることができません。

 デジタル化の波に乗り遅れるというレベルの話ではなく、最低限のデジタル化に対応できなければ、金銭的・時間的に損をし、場合によりそれが家庭の困窮や倒産の引き金になってしまいます。貧乏暇なしとはいいますがオンラインで済むことをわざわざ出向いて行う時間は働いているわけでもないため損する一方です。無論、この記事をWeb上で読めているひとであれば、さほど困難なく対応はできるとは思います。

企業側の準備不足とトラブル

 オンラインでいいことづくめかというと悪い部分も露呈しています。企業の準備不足もあって登録がうまくできないというトラブルです。この手のトラブルにはパターンがあります。

1.ユーザーでの登録作業(入力作業)が分かりずらいなどで困難(問い合わせ殺到や挫折による離脱)

2.誤登録でも先に進んでしまい大きな手戻りが発生する

3.受付は済んでいても実作業(バックヤード)とのバランスが悪く業務が滞留する

4.アクセス集中でつながらず機会ロスが発生する

 準備不足や想定外であっても4については、サーバー増強(コストを気にしなければ自動でスケーリングするようにしておくこともできたと思いますが)等で対応できるので比較的良いのですが、1~3はかなり深刻な事態に発展します。1や2が起こる原因は使う人の立場を考えていなかったり十分なテスト検証が行われていないことで起こります。最近の行政DXはこの手の問題が多いです。法人設立ワンストップサービスがはじまりましたが、使ってみると、法人設立を含めてワンストップで行うのは内容を理解しにくいのでハードルが高く、さらにシステムで入力すべき内容に関する疑問点を記載の問い合わせ先に問い合わせると、使い方は説明できるが記載内容は法務局等に聞いて下さいと回答されるのです。使う人がどう考えるかとか、そこに何を入力するべきかわかりやすいかなども含めてシステムの良し悪しが決まりますが、行政の用意するシステムは残念ながらDXと呼ぶには程遠い単なるデジタル化の典型例となっています。

 今回最も問題になっているのは3のようです。通常、想定ユーザー数を算出した後、ペースがショートするケースや、想定外に膨れるケースに対してどのように対応するかをプランニングしています。なので、ユーザー数が想定外に増えてもバックヤードでの処理能力との関係で一旦受付を停止するという方法を取ります。今回は準備の甘さもあったということなので処理能力の事前見積等よりも早く受付停止をせざるを得ない状況になったのではと思われます。

 物理的な会場を予約して何かイベントを行うとなれば非常にシビアに準備を重ねます。それは目でわかりやすいキャパがあるからです。オンラインになった瞬間、実態が見えにくくなんとなくできている風になるため準備や出来上がりについておろそかになってしまうという状況です。今後もオンライン化が進む世の中では、情報拡散や人気の集中による混乱は発生しますし、オンラインだけでは完結できない実体のモノやサービスやり取りがある場合にはオンラインとオフラインのつなぎの部分でのロスも考えなくてはいけません。いずれにしても、色々なことを想定しユーザーのことを第一に考えた取り組みが必要になってくることは間違いありません。

まとめ

・デジタル化知識は必須でありとあらゆるものがデジタル化される流れになるので、避けては通れないし避ければ、時間もお金も損をすることが当然の世の中になっている。

・デジタル化をして顧客と向き合う場合には顧客体験をしっかり考え、オペレーションプランも入念にしておく。想定外となる場合のプランも準備し対応できるようにする。